未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させることを「Initial Public Offering」の略でIPO=株式上場といいます。
この際、株主が保有している株式が売りに出されたり、新たに株式が公募されたりします。
株式上場(IPO)を成功させて、自社の株式を証券取引所に上場させることに成功した企業は信用・資金調達力・優れた人材の確保・創業者利益の獲得などのようなメリットはありますが、非上場企業である場合と比べて、様々な利害関係者が増大するため厳しい規制が設けられています。
また上場するためは莫大な費用がかかります。
以下、株式上場する前後でなすべき事項についてみていきましょう。
現在は過去に遡って監査することが認められていない為、上場まで早くても約3年はかかります。
株式上場を首尾よく完遂する為にまずは社内体制を整え、税務や経理の知識・スキル・交渉力・統率力のある責任者を選任する必要があると思います。
上場する為には、「税理士・税理士法人」以外に「証券会社」及び「監査法人」との契約が必要になります。
証券会社は「公開準備指導」、「公開審査」や「株式の引き受けと販売」を行います。
監査法人は「企業の財務諸表が適正性」、「企業経営の継続性」を証明します。
上場後に「粉飾決算」「収益基盤の脆弱性」が明らかになれば、株価暴落など投資家が損害を被ることになりますから、
投資家保護を図り、証券取引市場の信頼性を確保するために事前に厳しくチェックするのです。
株式上場準備を効率的に進めるためには、早い段階で解決すべき課題やその対応策を洗い出し、
併せてそのスケジュールを立てておく必要があります。
資本政策プランの作成
※資金調達の引受先及び安定株主の役割を果たすベンチャーキャピタルや銀行等
※株価算定、第三者割当増資等の手続
「中長期利益計画」
会社の経営理念・経営ビジョンをもとに策定された経営戦略を実践するため、今後の販売活動、購買活動、投資計画、資金計画等の
具体的指針を明示する計画のこと(部環境や内部環境の客観的分析を含めた3年~5年後の明確な目標値の設定)
「単年度予算策定」
「予算管理方法」の確立(予算管理規程・マニュアルに基づいた予算管理及び予実分析、ローリングなど)
組織的経営に基づいた公開会社として社会的責任を果たすことが求められているため「株式公開審査」では、
「コーポレート・ガバナンス」が重視されます。
組織的経営の実践には、「規程」(社内ルールや基準を法的な要件を満たすものとして文書化したルール)を
社内に周知徹底させることが重要です。
上場審査において規程の整備・運用状況は厳しくチェックされるため、上場直前々期末までには規程の整備を完了させ、
直前期には規程に基づいた組織的運営を実施する必要があります。
・内部統制や内部牽制に配慮した上場時の組織や役員編成
・株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成
・内部監査体制の確立
製造業の公開審査では、「適正な原価の把握」「原価管理」等に重点が置かれます。
それらを的確に遂行するために「原価計算システム」を導入する必要があります。
原価計算
原価計算方法の検討・決定
単年度の予算の正確性を確保する上で「月次決算」の精度は重要です。
多くの場合、月次決算は、予算に対する実績分析を行ったうえで、毎月行われる取締役会に報告することになると思います。
公開準備会社にとって、予実分析の結果を経営に反映させることが必須であり、決算作業の負担軽減のための月次決算・四半期決算・本決算の方針設定、月次決算のスケジュール作成・管理することが重要です。
上場初年度以降においてはJ-SOX対応が必要です。
また、内部監査部門は内部統制の有効性を継続的に評価しなければなりません。
また、内部統制報告書には監査人の監査が必要です。
関係会社や特別利害関係者は申請会社の決算操作やオーナー・役員の利得行為に利用される可能性があるため、特別利害関係者取引の把握を行い、審査上認められる範囲を明確化しなければなりません。
合理的な存在意義がある関係会社については、連結範囲の設定、連結決算、セグメントの区分、申請会社との取引条件、関係会社の管理方針など整理すべき事項は多岐にわたります。
市場指定替えとは、上場している新興市場を東京証券取引所などの市場へと変更することをいいます。
投資家の参加数が多く、知名度、信頼性が増しやすい市場への上場がIPOの到達点と考えられるからです。
上記のように株式上場をする前後には対応すべき業務が山積しており、各種専門家の連繋が必要不可欠です。
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